私たちの日常生活には、「予期しやすい困難」と、「思いもよらない困難」の両方が存在します。これらの困難に対して社会福祉が果たす役割は大きく、誰もが人生のどこかでその支援を必要とする可能性があります。

まず、私たちの生活の中で予想しやすい困難として、加齢や家族構成の変化による影響があります。人間の人生は「ライフサイクル」という枠組みの中で変化していきます。典型的な家庭を例にすると、以下のような変遷が見られます:

  • 結婚による世帯の形成
  • 子どもの出産と養育による世帯の拡大
  • 子どもの就職による家計の安定と収入の増加
  • 子どもの独立に伴う世帯の縮小
  • 高齢期に入り、退職による収入の減少
  • 配偶者の死去によるさらなる世帯の縮小
  • 最終的に本人の死去に至る

このライフサイクルを通して、家庭の経済状況は大きく変動します。20世紀初頭のイギリス・ヨーク市で行われた著名な社会調査家B.S.ラウントリーの研究によれば、一般的な労働者でも人生で三度、貧困に陥る可能性があるとされました。それは、①自分が子どもで親に養われている時期、②自分が親となり子どもを養育する時期、そして③退職後の老後です。

このような視点は、ラウントリー以前にロンドンで貧困調査を行ったC.ブースの研究にも表れています。彼は特に高齢者の貧困に注目し、公的年金制度の導入を提唱しました。これらの調査結果は、福祉国家の制度設計に大きな影響を与え、年金制度や児童手当のような所得保障が「誰にでも必要な制度」であるという考え方を定着させるきっかけとなりました。

つまり、社会福祉は特別な人のためのものではなく、すべての人が人生のどこかで必要とする「共通の支え」なのです。たとえば、貧困と病気の悪循環は早くから知られており、誰もが平等に医療を受けられる保障制度の必要性が各国で議論されてきました。

近年では、長寿化に伴う高齢者の介護問題や、働く女性の増加に伴う保育ニーズの高まりが顕著です。これらの課題に対しても、社会全体で対応する仕組みが構築されつつあります。誰もが直面しうる問題に備えて、利用しやすい福祉制度をあらかじめ整備することが重視されてきたのです。

福祉国家における社会福祉制度は、こうした「普遍的なニーズ」に応える仕組みとして位置づけられています。それは、個人の自己責任を支えるための前提条件としての役割を担っているのです。

このように考えると、社会福祉はもはや「特別な支援」ではなく、「誰にでも必要な制度」として認識されるべきものです。市民全体で支え合うことにより、誰もが安心して人生を送れる社会が実現するのです。社会福祉は、今や私たち一人ひとりの生活の根幹を支える存在となっています。